湿った空気が紙の臭いを運んできた。煙突から湧き出る白い煙がこの街を覆う。
家の前にはドブ川が流れていた。濁った黒い水に浮かぶ銀杏の葉の黄色が妙に鮮やかだ。首輪のない痩せた犬が何かをくわえていた。酒場の店先の吐物を踏まないように学校に通った。
これがこの街の原風景。
街は綺麗になった。綺麗になりすぎて、汚れたものへの嫌悪がかえって人の心をとげとげしくさせている。
夕暮れの空を見上げ「紙の臭いがすっから明日は雨だわな」と老人がつぶやいた。
アリオ亀有がかつて紙工場だった頃のお話。
湿った空気が紙の臭いを運んできた。煙突から湧き出る白い煙がこの街を覆う。
家の前にはドブ川が流れていた。濁った黒い水に浮かぶ銀杏の葉の黄色が妙に鮮やかだ。首輪のない痩せた犬が何かをくわえていた。酒場の店先の吐物を踏まないように学校に通った。
これがこの街の原風景。
街は綺麗になった。綺麗になりすぎて、汚れたものへの嫌悪がかえって人の心をとげとげしくさせている。
夕暮れの空を見上げ「紙の臭いがすっから明日は雨だわな」と老人がつぶやいた。
アリオ亀有がかつて紙工場だった頃のお話。